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多面的機能支払交付金の有効活用


~継続は力なり美しい景観をいつまでもそしてみんなの笑顔が見たい~

七渡農地水環境保全会 事務局長 中村 孝


本内容は、「農村振興」第794号 平成28年2月号に掲載された内容を転載しています。

一.地域の概要

 はじめに私たちの住んでいる千葉県茂原市七渡地域の紹介をします。
 私たちが多面的機能支払い交付金事業に取り組んでいる地区は千葉県のほぼ中央部東側、九十九里平野に位置しJR外房線の本納駅と新茂原駅の中間の南側にあり市街地に隣接し気候も比較的温暖で、ほとんど平坦な地形で耕地が広がり、その間に農家が点在しており、水田五三ヘクタール畑七八ヘクタールの純農村地帯です。
 私たちの地区は昭和四五年から五〇年にかけて県営圃場整備事業東郷関地区として100㍍×30㍍の区画を基本として整備されました。用水は国営両総用水水利事業の利根川を水源とし、幹線用水路により本地区に導水されております。
 整備前は小さな水田や畑が点在し、道路も水路も曲がりくねり耕作を営むにはそれは大変な重労働でした。整備後は大型機械の導入で農業の効率化が図られ水稲並びに野菜の生産が非常に効率的になり首都圏の台所としての役割を果たしています。

二.取組の経緯

 私たちはこの豊かな自然環境や田園風景を守るためおのずと昔から農家の共同作業として、用水路、排水路の泥上げ、道路、水路、農地法面の草刈り、そして道路の道ぶしん(道路の補修)を営々と行ってまいりました。それにより地域の環境及び景観が守られ二十年くらい前までは夏になると用水路に蛍が飛び交い幼子をかたぐるまして観ていたのを覚えています。
 しかしながらここ最近では農家の高齢化による環境及び景観の維持管理の脆弱化、担い手の不足による農業の衰退、耕作放棄地遊休農地の増加、さらには新興住宅地等の増加による水質の保全も心配されており、蛍も全く見ることが出来ない状況で今日に至っています。
 そんなおり平成十九年度から国の事業として農地・水環境保全向上対策の事業が発足しました。
 この事業は農家非農家を問わず地域共同による農地農業用水等の資源の保全管理と農村環境の保全向上の取り組みに対して支援を行うものであり、当地区も農家の高齢化及び減少により将来にわたってこの七渡の環境及び景観を守っていくためには農家だけでは限界があると思われ、たまたまわたくしが土地改良事業団体連合会に勤務していたこともあり早速この事業への参加の準備を始めました。
 事業発足後の平成二十年に七渡地区の自治会、農家組合、消防団、老人会等に呼びかけを行い各組織の代表と数回協議を重ねました。本地域は非常にまとまりがよくぜひこの事業に参加したいとの結論に達したため茂原市に採択申請を働きかけ、事業発足当初より2年遅れの平成二十一年度からこの事業に取組んだ次第です。

三.取組の紹介と今後の展望

 わたしたちの地区の取り組みは昔から営々と農家の皆さんが環境と景観を守るために実施してきた活動を非農家も含めて地域全体で継続しています。特に目玉となる活動は残念ながらありません。無理をせずこの活動を継続していくことと構成員の方々も認識しています。農地維持の作業としては、水路の泥上げ、道水路及び農地法面の草刈りや雑木の覆い切り(伐採)、農道の路肩の堆砂の処理、また遊休農地発生防止のための適切な保全管理(ハンマーモアによる雑草の刈り取り)等地域資源の基礎的な保全活動を実施しています。地域資源の質的向上を図る共同活動としては、機能診断の結果により施設の軽微な補修や、農村環境保全活動の景観形成の一環として河川の堤防へ桜の苗木の植樹や遊休農地へのコスモスや菜の花の播種を行っています。一面にそれぞれの花が咲いた時には感慨深いものがあります。そして平成二十三年度からは地域住民との交流を深めるため七渡コスモスフェスタを開催しています。この取り組みは七渡の秋の祭礼で数年に一度行われていた神輿渡御が二十五年前を最後に消滅してしまい、地域住民全体の交流の場がなくなったため、非農家も含めて地域の住民が一同に会する交流の場を作りたいことがきっかけとなりました。幸いにも役員の皆さんは全員大いに賛成していただき今年度も十月に第五回七渡コスモスフェスタを開催する運びとなっています。フェスタではコスモスの観賞はもちろんのこと花の摘み放題、和太鼓の演奏、いもほり大会や落花生ほり大会のイベントを実施しています。また焼き芋や綿菓子ポップコーン等を無償で提供しています。開催当初の来場者は百名程度でありましたが昨年は約三百名が来場していただきました。会場でお年寄りが懐かしく談笑している姿を見るとこの行事を実施してよかったなあと今更ながら思います。
 今後の課題や展望として、当地区も例外ではなく農家の高齢化がますます進むと思われます。当地区には個人的な営農組織は以前からありましたが平成二十五年度に農事組合法人七渡営農組合(代表加藤古志郎・組合員十六名)が新たに設立され今後七渡の水田の営農については委託作業が加速化すると思われます。しかし当地区は畑の面積がかなり多いので耕作放棄地や遊休農地の拡大が危惧されます。今後その対策が急務となりそうなので営農組合と連携しながら役員構成員で一致団結してその対策に当たりたいと思います。また当地区には少子化の影響により残念ながら子供会が組織されていません。しかしながら最近では新興住宅の増加により子供たちも少しずつ増えてきております。今後はこの事業を有効に活かし次世代を担う子供たちと一緒に体験学習などを通じて七渡の多面的機能の維持発揮を図り、地域資源の適切な保全管理に取り組んでいきたいと思います。

2015年8月受稿



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